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走馬灯のように/33

走馬灯のように/33_c0168955_652041.jpg山本周五郎の『虚空遍歴』は江戸で端唄の名人と評判がたった若き中藤冲也がそういう評判に包まれて浮名が立つほどだったにも関わらず、それに満足できずに自分を嫌悪し、あえて本格的な浄瑠璃を作ろうとして苦悶する遍歴が克明に描かれている物語である。さすがに才能のある冲也による浄瑠璃は第1作がすぐに中村座にかかって好評を博するのだが、果たして冲也はこれにも満足できずにしだいに行き詰まっていく。周囲では「あれは金の力だ」といった噂がたてられ、冲也はそれに潔癖に対峙してしまったからだった。師匠の常磐津文字太夫からも離れてしまう。こうして冲也はあてどもない浄瑠璃遍歴に旅立っていく。物語は江戸から東海道を上り、京都へ、近江へ、更に金沢へと変転する。その変転に冲也に惚れるおけいがかかわって、独白の挿入が入ってくる。長い独り言である。おけいはもともとは‥‥ 続きを読む♂
by tomhana0901 | 2014-04-07 05:18
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